読書の秋に乗じて

久しぶりにはてダ版小説を書いてみました.木曜日発案,考案時間40分,執筆時間約10分の超急造短編小説ですw

―深夜,僕は一人夜道を歩いていた.普段はしない,夜の散歩というものだ.なぜ散歩しようなどと思ったのかは忘れた.たぶん気分だろう.
もう夏は去り,季節は秋に本格的に移ろうとしている.夜風が冷たく,はっきり言って寒いくらいだ.まだ葉は緑だが,あと1週間もすれば黄色くなるだろう.
「…寒いな.」
そろそろ帰ろうかと思った時だった.
「あの…」
静かで透き通った声だった.振り返れば,僕の後ろに女の子が立っていた.僕と同い年くらいで,街灯に照らされたその姿はとても綺麗だった.
「はい,何か?」
「…」
女の子は何も言わず,じっと僕を見つめていた.僕は戸惑い,もう一度聞いた.
「あの…僕を呼んだのですよね?」
女の子は頷く.そもそも周りには僕と女の子しかいないのだ.そうでないと困る.
「じゃあ…僕に,何かご用ですか?」
女の子はまたしばらく僕を見た後,その静かな声で言った.
「良かった…あなたは今も,お変わりないようですね.」
「え…?」
僕は驚いた.僕は彼女と面識なんてないはずだ.でも彼女は今確かに,今もお変わりないと言った.
「あの,以前どこかで,お会いしましたか?」
「はい.」
清々しいほどはっきりと彼女は言った.訳が分からない.記憶を幾ら漁っても,彼女の姿など無いのだ.
「あの…」
人違いでは?と言おうとした.でもその前に,彼女は口を開いた.
「近い内に,またお会いできると思います.その時に,また.」
彼女はぺこりと丁寧にお辞儀して,僕に背を向けた.
「ま,待って!君は―」
僕は追おうと駆け出した.だが,暗闇が彼女をすぐに飲み込んでしまい,姿は見えなくなってしまった.追えなくなった僕は,ただ呆然と立ちすくむしかできなかった.
「一体…」
最後まで言えなかった言葉が,虚しく口から出ていた.そして気がつけば,僕は彼女の姿と,最後のあの言葉を頭の中で何度も再生させていた.
―近い内に,またお会いできると思います.その時に,また―
「…近い内に,か…」
それは季節の変わり目―夏が終わり秋に移ろうとしている時期に起きた出来事だった.


…とまあこんな感じです.PCが故障中で本線が進めないのと日頃の憂さ晴らしにと思い書いてみました.短編を書いたのは約4ヶ月ぶりぐらいですかね.
…現在修理中のPCが戻ってこなかったら,来月にまたこの続きを書いているような気がします.